

鹿島市民文化ホール SAKURAS
751席の新市民文化ホールの計画である。同敷地に建っていた旧市民会館と市内既存の民俗資料館を統合し、新築するこ...
有限会社ナスカ一級建築士事務所
162-0052 東京都新宿区戸山3-15-1 日本駐車ビル4F
T 03-5272-4808 F 03-5272-4021
nasca@studio-nasca.com
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紀元前四世紀の中国の荘子の『応帝王編』に混沌という名の王が出てくる。ある時、南の国と北の国の王を招いてご馳走をした。混沌の顔には実は目鼻耳口がな かった。ふたりの王は返礼のつもりで毎日一つずつの孔を開けていったが、七つ目の穴を開け終わった途端に混沌は死んでしまう。これが日本語の混沌の語源と なった。天体の運行に関する三体問題、レイノルズによる流体問題、ボルツマンの気体運動に関するエルゴード仮説、いずれも十九世紀後半から末にかけての研 究である。二十世紀に入ると量子論や相対性理論が舞台の主役となり、カオスの存在が再び脚光を浴びるのは、六三年のローレンツの熱対流運動に関する論文を 待つ。奇しくもこの年に、磯崎新は建築の変移に関する「プロセス・プランニング論」を著した。われわれは現代の都市という名の、とても変化の激しい集合体 の中で生き、現代の建築というきわめて複雑なその「部分」を扱おうとしている。二十世紀を通じてわれわれは、建築が無色透明な更地の上に、自立的に建つかのように考えてきた。だが実際の敷地には周囲の環境があり、気候的、社会的、文 化的風土があり、そしてその場所の過去からの来歴がある。建築とは仮にそれが新築であったとしても、少し範囲を広げれば、そのコンテクストに対する「増 築」である。これから私が考えようとしているのは、都市のカオスに対して、そのなかの点的部分としてある建築が果たす、鍼治療的な作用に他ならない。