こうの INR クリニックKohno INR Clinic
徳島県板野郡藍住町
設計 | 古谷誠章+NASCA |
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用途 | 診療所・店舗(薬局) |
構造 | S |
規模 | 地上1 |
敷地 | 1,800.22m2 |
延床 | 748.20m2 |
竣工 | 2018.09 |
敷地は南側の田んぼと北側の畑に間に囲まれ、東側の国道から西側に長く伸びている。田んぼと畑がつくる田園的な風景が待合とリハビリ空間の背景となり、体が不自由な患者さんが自由に利用できる平屋が必要であると考えた。また晴れの日は日陰となり、雨の日は雨よけとなるアプローチとして南側に軒下空間を設けた。軒下空間は蝶ネクタイのようなV字の形であり、奥行きが異なる空間はアプローチや車を待っている間に町並みを見ながらゆっくり休憩することができる。大きな屋根の下には、事務室、診察室、訓練室がある高さ2700mmの箱を北側に、高さ700mmの低い腰壁を南側に設けて、開放的で、囲まれた空間を計画した。それでドクターやナース・スタッフが患者さんとひとつ屋根の下に共に過ごし、互いが向かい合うひとつながりとなる空間を考えた。また箱と腰壁に囲まれた空間は、待合・リハビリ・診察室の距離感を小さくして、患者さんから見てドクターやナースが身近にいるように感じる関係性が生まれる。構造は厚み28mmのフラットバーと厚み 24mmのLVLを活かして柱梁をつなぐ木質のアーチを考え、V字の軒下空間に沿って斜めに配置した。木質のアーチの連続は、待合とリハビリ空間を柔らかく包み込んだワンルーム空間とアーチとアーチの間に町並みが見える小さいスケールの空間をつくる。アーチの長さは軒の深さに沿って奥行きが変わるため、薬局からみえると奥行きが短く感じる一方で、リハビリのエリアにいると距離感を感じるなど、パースペクティブ効果が生じる。このような人々の視線の方向性と動きによって生まれる空間の微妙な変化は、親密感のある落ち着いた医療空間をつくった。
撮影 淺川 敏