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有限会社ナスカ一級建築士事務所
162-0052 東京都新宿区戸山3-15-1 日本駐車ビル4F
T 03-5272-4808 F 03-5272-4021

LUPICIA 滋賀水口工場LUPICIA Shiga Factory

 滋賀県甲賀市水口町ひのきが丘36−7

設計 古谷誠章+NASCA
用途 工場
構造 S
規模 地上2
敷地 8,311m2
延床 4,247m2
竣工 2012.11
掲載 新建築2013.07

東日本大震災の発生を受けて、それまで栃木県宇都宮市の工場で稼働していたブレンド・ティーの生産を、関東地方以外にも新たな生産拠点を設けるべく計画されたものである。原材料の搬入から異物除去、ブレンド、乾燥、パッケージ、出荷までの一貫したラインを明快に配置して、商品生産の可視化を図った。「ここで働くのが楽しく、幸福だと感じてもらえるような工場が欲しい」との依頼を受け、働く人たちが誇りをもって、毎日楽しく、愉快に働けるように、工場前面に、その「晴れ舞台」を用意しようと思い立った。普通なら荷物の積み下ろしのためだけに庇を張り出すのだが、ここでは、原材料が運び込まれてから出荷されるまで、その仕事の一部始終が「絵」となりパフォーマンスとなるよう、舞台とその天蓋とを考えた。そのためには是非、建築本体と一体化した舞台背景としての大庇が欲しい。建物の奥にある一条の廊下空間は、スタッフ動線であると同時に、作業中の休憩スペースでもある。気積を絞って人に適した空調がなされ、持ち場を超えたふれあいの場ともなり、来訪者を案内することもできる。ピクトサインは寺澤徹さんによるもの。最も奥側に、工場のメイン器官ともいえる製造ラインが向かって右手から左へと並び、効率よく生産加工ができるようにした。茶葉の粉塵が多いので、内装は付着しにくいステンレスを使用、倉庫部分を含めてパネルはすべて縦使いとして、埃溜まりをつくらないディテールとしている。従業員のランチルームやミーティングルームは、開放感のある2階にあり、遠くの山並みが楽しめる。「晴れ舞台」を覆う大庇の形状は、10tトラックのローディング時に、雨除けに必要な断面を計算したものだが、同時に、工場の南北両妻のALC板壁面に施されたマルチ・カラーリングと共に特徴ある顔つきとし、広い工業団地内で迷わずに見分けるためのものである。

撮影 淺川 敏